
1歳半(1歳6ヶ月)を迎える頃、多くのママやパパが直面するのが「言葉の発達」に関する悩みです。
この時期は、単語や二語文を話し出す子もいれば、全く話さない子もいて、個人差が非常に大きく表れるタイミングだからです。
毎日の育児の中で、つい自分の子と周りの子を比べてしまったり、ネットの情報を見て不安になったりしていませんか?

この記事では、1歳半の言葉の発達目安について、言葉が「遅い」場合と「早い」場合、それぞれの原因や特徴、そして家庭でできる言葉の発達を促す関わり方(トレーニング方法)までお伝えします。
結論からお伝えすると、1歳半での言葉の発達には驚くほどの個人差がありまので、焦る必要はありません。
しかし、お子さんの現在の状態を正しく理解し、適切な関わり方をすることは、今後の健やかな成長にとって大切なことです。
不安な気持ちを少しでも解消し、お子さんとのコミュニケーションをより楽しむためのヒントになれば幸いです。

この記事でわかること
- 1歳半でどれくらい言葉を理解し、話せるのが一般的な目安か
- 言葉が「遅い」と感じる原因と、心配なケースの見極め方
- 言葉が「早い」子の特徴と、その後の成長
- 家庭で簡単にできる、言葉の発達を促す具体的な関わり方
- 1歳半健診でのチェックポイントと専門家への相談タイミング
1歳半の言葉の発達目安:理解と発語の違い

まず、1歳半の子どもが一般的にどれくらい言葉が発達しているのか、その目安を見ていきましょう。
ここで大切なのは、「言える言葉(発語・表出言語)」だけでなく、「理解している言葉(受容言語)」の発達にも目を向けることです。
理解している言葉:大人の指示が分かり始める
言葉を発するよりも先に、子どもは言葉の意味を理解し始めます。1歳半頃になると、大人が話す簡単な言葉や指示を理解できるようになってきます。
理解の目安
- 「ないないして」と言われると、おもちゃを片付けようとする。
- 「ワンワンどっち?」と聞くと、犬の絵を指差しできる(応答の指差し)。
- 「ちょうだい」と言うと、持っている物を渡してくれる。
- 「ダメ」と言われると、手を引っ込めたり、泣きそうな顔をする。
このように、言葉でのやり取り(コミュニケーション)が少しずつ成立してくるのがこの時期の特徴です。
まだ上手におしゃべりできなくても、こちらの言っていることが伝わっている感覚があれば、言葉の土台は順調に育っています。
話せる言葉(発語):単語から二語文へ
次に、実際に口に出して言える言葉の目安です。
有意語(意味のある単語)の出現
一般的に、1歳半頃には「マンマ(ご飯・ママ)」「パパ」「ワンワン(犬)」「ブーブー(車)」「バイバイ」など、意味のある単語(有意語)が2〜3語程度出てくると言われています。
しかしこの時期はまだ指差しと「アーアー」「ウーウー」といった喃語(なんご)が中心ですので、はっきりとした単語が出ていない子もいます。
この時期は、自分と関係の深い人物(パパ、ママ、ジージなど)や、生活に密着した欲求(マンマ、ネンネ、イヤ)、興味のある対象(ワンワン、ブーブー)から言葉を覚えていく傾向があります。
二語文の始まり
早い子では、1歳半を過ぎた頃から「ワンワン、いた」「マンマ、ちょうだい」「パパ、ネンネ」のように、二つの単語をつなげて話す「二語文」が出始めることもあります。
これは、頭の中で言葉を組み合わせて文章を作る能力が育ってきている証拠です。
脳が発達し、より複雑な思考ができるようになってきているのです。
【重要】目安はあくまで目安!個人差が最大のポイント
ここまで目安をお伝えしましたが、これらはあくまで「平均的な姿」にすぎません。
1歳半という時期は、身体的な成長と同じように、言葉の発達においても非常に個人差が大きい時期です。
「隣の子はもう単語をつなげて喋っているのに、うちはまだ…」と焦る必要は全くありません。言葉の発達は、その子の個性や興味、環境によって大きく異なります。
言葉を溜め込んでいる時期(インプット期)が長く、ある日突然堰を切ったように話し出すタイプの子もたくさんいます。
大切なのは、その子なりのペースで成長しているかどうかを見守ることです。
「1歳半で言葉が遅い」と感じる原因と見極め

では、言葉がなかなか出てこない、いわゆる「言葉が遅い」状態には、どのような原因が考えられるのでしょうか。
多くは心配のない個人差ですが、中には注意が必要なケースもあります。
原因1:言葉を溜め込んでいる
最も多い原因は、単なる個人差です。
言葉を理解する力は育っているけれど、それを口に出す(発語する)準備がまだ整っていない状態です。コップに水を注いでいて、溢れ出すのを待っているようなイメージです。
このタイプの子は、こちらの言っていることは理解しており、指差しや身振り手振りで意思表示をすることが多いです。
発語に必要な口の筋肉の発達や、本人の「話したい」という意欲のタイミングを待っている状態と言えるでしょう。
原因2:性格によるもの(慎重派、内気)
子どもの性格も言葉の発達に影響します。
慎重な性格の子は、自分が完璧に言えると自信が持てるまで、言葉を発するのをためらう傾向があります。
また、内気で人見知りをする子は、家族以外の人前では口をつぐんでしまうことも少なくありません。
このような子に無理に「ほら、なんて言うの?」「言ってごらん」と発語を強要すると、ますます萎縮して話せなくなってしまう危険性があります。
リラックスできる環境で、安心して話せる雰囲気を大切にしましょう。
原因3:環境による影響
子どもが置かれている環境も、言葉の発達に関係します。
例えば、きょうだい(特に姉)がいて、家庭内がいつも賑やかな環境だと、言葉の刺激が多く、話す意欲も刺激されやすい傾向があります。保育園などで他の子どもと接する機会が多い子も同様です。
一方、大人しい家族構成で、普段あまり話しかけられない環境だと、言葉のインプット量が少なくなりがちです。
また、子どもが要求する前に親が先回りして何でもやってしまうと、「言葉で伝える必要性」を感じにくくなり、発語が遅れることもあります。
原因4:発音の難しさ
子どもにとって発音しやすい音と、難しい音があります。
「マンマ(マ行)」「パパ(パ行)」などの唇を使う音は比較的出しやすいですが、「サ行」「カ行」「ラ行」などは高度な舌の動きが必要で、幼児期には発音が不明瞭になりがちです。
言いたい言葉があっても上手く発音できず、もどかしくて口をつぐんでしまうこともあります。
発音が未熟なのは成長過程ですので、無理に矯正せず、大らかな気持ちで受け止めましょう。
原因5:注意が必要なケース(聴覚や発達の問題)
稀にですが、言葉の遅れの背景に、聴覚障害や発達障害などが隠れている場合があります。
聴覚の問題:耳の聞こえが悪いために、言葉を正確に聞き取れず、発語が遅れるケース。中耳炎を繰り返している場合なども注意が必要です。呼びかけへの反応が鈍い、テレビの音を大きくしたがるなどの様子があれば、耳鼻科で聴力検査を受けましょう。
発達障害(自閉スペクトラム症など):言葉の遅れだけでなく、目線が合いにくい、指差しをしない、名前を呼んでも振り向かない、こだわりが強い、などの特徴が見られる場合、発達障害の可能性も考えられます。

逆に「言葉が早い」子の特徴とその後
「言葉が遅い」悩みとは逆に、「うちの子、言葉が早すぎる気がする…」と、その成長スピードに驚きや戸惑いを感じるママ・パパもいます。
言葉が早い子にはどのような特徴があるのでしょうか。
言葉が早い子の特徴
模倣が上手:大人の言った言葉をすぐに真似(オウム返し)する。
記憶力が良い:一度教えた物の名前をすぐに覚える。
興味の幅が広い:絵本や図鑑などに強い興味を示し、「これなあに?」と頻繁に聞いてくる。
女子に多い傾向:一般的に、脳の構造上、言語機能を司る領域の発達が女の子の方が早い傾向にあると言われています。特に姉がいる女の子は、お姉ちゃんの影響を受けておませな言葉遣いになることも。
言葉が早いことのメリット・デメリット
言葉が早いと、自分の気持ちを言葉で伝えられるため、かんしゃくが少なかったり、トイトレなどがスムーズに進みやすかったりするメリットがあります。
周囲とのコミュニケーションも早いうちから活発になります。
一方で、言葉の発達に体の発達や情緒面の発達が追いつかず、バランスを崩してしまうこともあります。頭では理解していても体が思うように動かせずイライラしたり、大人びたことを言うけれど中身はまだ1歳児で甘えん坊だったり。
「言葉が早い=賢い、手がかからない」と決めつけず、年相応の甘えを受け止め、情緒的な成長も見守っていくことが大切です。
1歳半健診でのチェックポイント
多くの自治体で実施される1歳半健診(1歳6ヶ月児健康診査)は、言葉の発達を確認する重要な機会です。どのような点が見られるのでしょうか。
健診で確認される主な項目
意味のある単語がいくつか出ているか:「マンマ」「ブーブー」など、意味のある言葉を3語以上話せるかが一つの目安となります。
指差しで応答できるか:絵本などを見せて「ワンワンどれ?」「車はどっち?」と聞いた時に、正しいものを指差しできるか(応答の指差し)を確認します。これは言葉の理解度を見る重要なテストです。
簡単な指示が理解できるか:「積み木をちょうだい」「ポイしてきて」などの簡単な指示に従えるかを見ます。
コミュニケーションの姿勢:視線が合うか、名前を呼ぶと振り向くか、人への関心があるかなど、社会性の発達も確認されます。
「様子を見ましょう」と言われたら?
健診で言葉の遅れを指摘され、「少し様子を見ましょう」「数ヶ月後に再確認しましょう」と言われることは少なくありません。
ショックを受けるかもしれませんが、これは「直ちに障害がある」という意味ではありません。
「現時点では個人差の範囲内かもしれないけれど、念のため経過を注意深く見ていきましょう」というメッセージです。
焦らず、後述する家庭での関わり方を意識しながら、次の機会を待ちましょう。
言葉の発達を促す!家庭でできる関わり方・トレーニング
言葉の発達には個人差がありますが、家庭での環境設定や関わり方によって、子どもの「話したい!」という意欲を引き出し、発達をサポートすることは可能です。
今日からできる具体的な方法をご紹介します。
1. 実況中継:子どもの行動や気持ちを言語化する

子どもは、自分の体験と大人の言葉が結びついた時に言葉を覚えます。
子どもが見ているもの、やっていること、感じているであろう気持ちを、親が代わりに言葉にして「実況中継」してあげましょう。
子どもが犬を見ている時:「あ、ワンワンいたね。可愛いね」
ご飯を食べている時:「マンマ、美味しいね。モグモグだね」
転んで泣いた時:「痛かったね。悲しいね。よしよし」
お風呂に入る時:「ジャー、お湯だね。あったかいね」
難しい言葉を使う必要はありません。ゆっくり、はっきり、笑顔で、短く語りかけるのがポイントです。
2. 応答的な関わり:子どもの発信に反応する
子どもが何か言おうとしたり、指差しをしたりした時は、すかさず反応してあげましょう。
子どもが「アー、ウー」と何か言ったら、「なぁに?」「そうなの」と相槌を打ちます。指差しをしたら、「あ、ブーブーだね!かっこいいね!」とその対象の名前を言って共感します。
「自分の発信が伝わった!」という喜びと満足感が、次の「伝えたい!」という意欲に繋がります。
3. 拡張模倣(オウム返し+α)
子どもが言った言葉を繰り返しながら、少しだけ情報を付け足して返してあげる方法です。
子ども:「わんわん」
親:「そうだね、大きいわんわんだね」「わんわん、来たね」
子ども:「マンマ」
親:「マンマ、食べる?」「マンマ、おいしいね」
これによって、子どもは単語だけでなく、言葉の繋がりや新しい表現を自然に学んでいくことができます。
4. 絵本の読み聞かせ・童謡・手遊び歌

絵本は言葉の宝庫です。ストーリーを追うだけでなく、「これは何かな?」「バナナ、美味しそうだね」と絵を見ながらやり取りを楽しみましょう。
繰り返しのある絵本や、擬音語・擬態語(オノマトペ)が多い絵本がおすすめです。
また、童謡や手遊び歌は、リズムに乗せて楽しく言葉を覚えるのに最適です。お風呂の時間や寝る前など、リラックスした時間に一緒に歌う習慣をつけると良いでしょう。
5. 知育教材を上手に活用する
家庭での関わりだけでは限界を感じる場合、子どもの興味を引くように作られた知育教材を利用するのも有効な手段です。
絵本、DVD、タッチペンで音が鳴る図鑑など、様々な教材があります。視覚と聴覚を同時に刺激し、遊び感覚でたくさんの言葉に触れることができます。

ただし、DVDなどを「見せっぱなし」にするのはNGです。
一緒に見ながら、「わぁ、ぞうさんが出てきたね!」などと親が声掛けをすることで、一方通行ではないコミュニケーションの道具として活用しましょう。
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これは逆効果!やってはいけないNG対応
良かれと思ってやってしまう行動が、実は子どもの言葉の発達を妨げてしまうこともあります。以下の点に注意しましょう。
言葉の強要・テスト:「これはなんて言うの?」「ほら、言ってごらん!」と無理に言わせようとしたり、テストのように問い詰めたりすると、子どもはプレッシャーを感じて話すのが嫌になってしまいます。
先回りしすぎる:子どもが「アー」と言って指差しただけで、すぐに「お水ね、はいどうぞ」と全て先回りして叶えてしまうと、子どもは「言葉で伝える必要」を感じなくなってしまいます。
「お水が欲しいの?」「何が欲しいのかな?」と、一言かけてから対応するように意識してみましょう。
他の子と比べる発言:「〇〇ちゃんはもうお話しできるのにね」といった言葉は、たとえ子どもが意味を完全に理解していなくても、親のネガティブな感情は伝わります。絶対にやめましょう。
心配な時の相談先とタイミング
家庭で関わり方を工夫しても、言葉の遅れがどうしても気になる、他にも気になる行動があるという場合は、一人で悩まず専門家に相談しましょう。
相談するタイミングの目安
・1歳半を過ぎても、意味のある単語が一つも出ない。
・こちらの言っていることを全く理解していないように感じる。
・名前を呼んでも振り向かない、視線が合わない。
・指差しを全くしない。
・極端に癇癪が激しい、こだわりが強い。
上記のような様子が見られる場合は、早めに相談することをおすすめします。
主な相談先
お住まいの自治体の保健センター:保健師さんに気軽に相談できます。電話相談を受け付けているところも多いです。
かかりつけの小児科:普段の様子を知っている医師に相談してみましょう。必要であれば専門機関を紹介してくれます。
地域の子育て支援センター:保育士さんなどの専門スタッフに相談したり、同じような悩みを持つ親御さんと情報交換ができたりします。
児童発達支援センター・療育センター:より専門的な発達の評価や相談、支援(療育)を行っている機関です。利用には自治体への申請が必要な場合があります。
まとめ:焦らず、その子のペースに寄り添って
1歳半の子どもの言葉の発達について、目安や個人差、関わり方について解説してきました。
言葉の発達は、植物が花を咲かせるのに似ています。種をまいて、水をやり、太陽の光を浴びせて、じっくりと根を張る時期があります。なかなか芽が出なくても、土の中では着実に成長しているのです。
「1歳半なのに…」と目安や周囲の情報に振り回されすぎず、目の前にいるお子さんの「今」の姿をしっかりと見てあげてください。
言葉でのやり取りはまだ難しくても、表情、視線、身振り手振りで、子どもは一生懸命あなたに何かを伝えようとしています。
そのサインを受け止め、笑顔で応えてあげること。それが、言葉を育む一番の栄養になります。
焦らず、比べず、日々のコミュニケーションを楽しみながら、お子さんならではの言葉の開花を温かく見守っていきましょう。